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代表取締役社長 加藤 文男

創業110年。
今も社員に脈々と受け継がれる、
社会貢献への責任感

代表取締役社長
加藤 文男

昨今、環境問題を意識する人々が増え、世界中の企業に対して経済発展だけでなく、環境に配慮した活動を求める声が強まってきています。加藤文明社では、環境問題などのCSRの考え方が重視されるよりはるか昔、創業当初である100年以上前から、環境への配慮や社会貢献を意識した活動に取り組み続けてきました。4代目の加藤文男(かとうふみお)が社長に就任してからは、CSR活動に一層力を入れています。

さらに、加藤文明社で働く社員が自分の仕事に責任感ややりがいを感じられるような社風・制度作りも実施し、社内的なCSR活動も拡大中です。

加藤文明社が行なっている環境に配慮した取り組みと社会的責任を果たすための取り組み、そして今後の展望について、加藤代表にインタビューしました。

代表自身のバックグラウンドが加藤文明社でのCSR活動推進に影響

CSR活動に取り組み始めたきっかけを教えてください。

弊社は2024年で創業110年目を迎え、私で4代目になります。しかし、私の代でゼロから始めたことは子ども食堂への支援くらいで、昔からCSR活動に取り組み続けてきました。その活動や社内文化を引き継ぎつつ、この時代に合った取り組みを考えているところです。

弊社だけでなく印刷業界全体を見ても、資源を大切に使うことや、リサイクルなど環境に優しい取り組みをしようという動きが長年続いています。

ただ、私自身の人生経験が、弊社に入ってからCSR活動としてさらにできることはないかと意識するようになった要因になっているとも思います。

私は16歳から25歳まで、オーストラリアに留学していました。オーストラリアの人々は、母国の自然や動物を守るために、我々は何ができるのかを普段の生活の中でも意識しているという国民性があります。10代から20代という多感な時期に、このような国民性を持つオーストラリアにいたことは、現在のCSR活動、特に環境に配慮した取り組みをしようという意識につながっていると思います。

帰国後にTOPPANに就職したことも、大きく影響しています。同社は環境に配慮した取り組みや各種認証の取得などをしっかり行っている企業だったため、そのような活動をするのが企業として重要であるという価値観が私の中で醸成されました。このようなバックグラウンドが、弊社でのCSR活動推進に関係していることは間違いありません。

設立から100年以上脈々と受け継がれる社会貢献への意欲や環境への配慮

加藤文明社ならではの取り組みや、CSR活動を行う上で意識していることはなんですか。

まず、弊社が他社と比べて特殊な点として、主要商材の大半が教科書や学習参考書など教育に関わる印刷物ということが挙げられます。教科書などの書籍はそのものに値段がついていて、ずっと使われていくものです。特に教育の礎となり、所有している人の人生に与える影響も大きいでしょう。昔から、子どもたちの将来、ひいては日本の将来に役立つ印刷物を作ってきました。このような背景があるため、弊社の社員全員が社会的責任を感じながら仕事に取り組んでいます。
 
また「子どもたちや日本の将来を支える」という点にやりがいを感じられる社員が集まっていることも、弊社の特徴です。お客様からは、弊社社員が人一倍責任感を持って仕事をしてくれることに信頼を寄せてもらっています。自分が印刷したものが子どもたちの人生に影響を与えるかもしれない、受験生の1分1秒を無駄にしないという緊張感・責任感を持って製造にあたっていることが、長年の信頼につながっているのです。このような社風が脈々と受け継がれており、ある種の社会貢献になっていると思います。

特に力を入れている取り組みを教えてください。

弊社の足立生産センターはISO14001(環境マネジメントシステム認証)という、環境への負荷を最小限にする取り組みができていることを証明する認証を持っています。実際の取り組みとして、印刷に使う薬品は、なるべく使用者や環境の負担にもならないものを選んでいます。また印刷作業の際に発生する廃棄物を渡すリサイクル業者様についても、きちんと資格を取得しており、実績のある業者様を選定しています。
 
他にも、産業廃棄物を圧縮して質量を減らす機械に投資してそれを導入したり、そもそも産業廃棄物や廃液が出ないような機械への更新も進めています。

昨今話題になることの多い、SDGsに焦点を当てた取り組みはありますか。

SDGsの目標のうち、「15.緑の豊かさを守ろう」というのは廃液の削減やリサイクル、廃棄物の分別などが該当する取り組みだと思います。排紙を分別(印刷済み、白紙、色紙、クラフト紙 他)し、完全にリサイクルしています。

それから「12.作る責任、使う責任」について、弊社の判断基準(Judgement Policies)が取り組みとして該当すると考えています。判断基準とは、全社員がいつでも同じ基準で物事を自分で判断できるように決めている優先順位のことです。判断基準には6段階あり、最も重要なのは社員個人の幸せ。次が社員のご家族の幸せ。3つ目が法令遵守。4つ目が製造責任。5つ目がお客様。最後に業績という順番です。3つ目の法令遵守と4つ目の製造責任がまさに「12.作る責任、使う責任」に値する取り組みだと思っています。モノを作る上で社員がコンプライアンスを守れるようにしつつ、製造したモノに対して責任が取れるようにするため、このような判断基準を掲げています。
 
繰り返しにはなりますが、弊社は主要商材の大半が教科書や学習参考書など教育に関わる印刷物になります。取引しているお客様は、教育に対する意識が高く、「4.質の高い教育をみんなに」に配慮した取り組みも多くみられます。そのため、弊社も印刷や製造の工程でのサポートに加え、デジタルコンテンツの分野でも同様のサポートを行っています。

すべての人の幸福度を上げることで、より質の高い社会貢献に繋がる理想的な仕組み

CSR活動に取り組む中で課題に感じていることはありますか。

やはりCSR活動には、お金や社員の労力がかかります。そのため、印刷業界だけでなく日本社会全体が、CSR活動にリソースを割く余裕がないのではないかというのが個人的な見解です。

CSR活動を積極的にできるくらいの経済・人的余裕が出れば、社員の幸福度も上がるでしょうし、企業としての社会に対する貢献度も上げられると思います。例えば、弊社なら八潮の野球グラウンドの設備を充実させたり、子ども食堂に野菜だけでなく肉を提供したりできるでしょう。本来ならば社会のせいにしてはいけないのですが、CSR活動に社会的な意義を感じていながらも、リソースを割けない現在の状況が大きなネックになっていると思います。

そのような状況の中でも実現したいことや、今後の展望などを教えてください。

2つあります。1つは、たくさんの企業が集まって、各企業が出し合った資金で社会貢献ができるような仕組みを作ることです。時間がかかる取り組みなので進めるとしても少しずつになると思いますが、この仕組みに関わることで税制優遇になるなどのメリットがあれば、前向きに参画してくれる企業は多いのではないかと思います。
 
もう1つは、障がいを持つ方への、本当の意味での支援をすることです。世の中には障がいを持つ方が増えていますが、そのような方々が成人になって働ける場所や機会が少ないという現状があります。弊社も以前、ある企業様と共同で、製品を作る過程に障がいを持つ方が参画するというプロジェクトを行いました。働いてくださる方の姿を見てプロジェクトをやって良かったと思う一方、このプロジェクトで救えるのはごく一部の人でしかないという感覚や、断続的にこのような業務を生み出し、彼らのコンディション次第で納期が柔軟な仕事を増やす必要があるという事を痛感しました。
 
企業は社員50人につき1人の割合で障がいを持つ方を雇用することが義務付けられていて、雇用できない場合は、その分のお金を国に収めることになります。現状、このお金がまるでペナルティのように扱われているように感じるのです。これでは本当の意味での支援にはなっていないのではないかと。企業がそのお金を特別支援学級や彼らの教材開発などへの支援に使うことによって、「障がいを持つ方を雇わなければならない」という企業の責任が果たせるような仕組みになると、企業がもっと積極的に支援を必要としている方々にアプローチできると思います。どの企業でも障がいを持つ方が幸福に働ける場所を提供できるわけではありません。彼らも自分の興味ある仕事や業界で働くことが重要です。また、業態によっては、危険な作業が伴う職場もあるでしょう。そのような企業でも、障がいがある方向けの施設や、そのご家族などへ支援・投資することで社会的責任が正当に果たされる仕組みができれば、より意義のあるCSR活動になるのではないかと思います。

今後CSR活動やコンプライアンスを重視した取り組みの重要性が高まる

印刷業界を含め、各業界で環境対応などCSR活動に取り組むことが企業の評判につながっている側面があります。加藤代表はどのように認識していますか。

特に発注側となることの多い企業様が、環境対応などを強く意識しているように感じます。その理由は、発注する企業の先にいるエンドユーザーの意識が高まっているからでしょう。モノ自体の価値だけでなく、それを製造する過程やその企業の思想に共感できるか、共感できなければそのサービス、商品を手に入れたとしても豊かにならないという考えです。このような背景から、環境保全や社会貢献を重視している企業であることが、市場で選ばれるファクターになっていると私は認識しています。

それから弊社は、2023年の10月にFSC®認証を取得しました。FSC®認証の取得は、お客様の要望に応え、持続可能なビジネスモデルを確立するための決断でした。この件からも、発注側が社会的責任を意識して、コンプライアンスなどをしっかり守っている企業とパートナーとして取引したいと考えているようです。

ありがとうございました。